1、はじめに
腰椎椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛を起こす有名な病気です。発症年令は、20代から40代に、最も多くみられます。軽度の場合は“椎間板症”と呼ばれ、繊維性軟骨が完全に脱出して、戻れなくなっている状態のことを、“椎間板ヘルニア”と言います。
レントゲン写真では、腰の側弯、椎骨(背骨)間の隙間が狭くなるなど腰椎の形、並び方が確認できます。
また、MRIでは、後ろに突出した椎間板の大きさや圧迫の程度などを、ハッキリみることができます。(写真A・B) |
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椎間板ヘルニア横断面イメージ |
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2、症状
主な症状は、腰から殿部、下肢にかけての痛みです。早期の場合には、膝、下肢の痺れやだるさです。
重症の場合は、「腰が健側(痛くない方)へ曲って、真直ぐに伸びない」「仰向では痛むので為、横を向いて海老のようにしないと眠れない」「長時間、腰掛けたり、歩いたりすると、痛みが強くなる」「咳や、くしゃみをすると、腰や足へ響く」などの症状が現れます。
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(A) |
(B) |
(A):重度ヘルニア
この方は、鍼治療、理学療法によって、症状の改善が見られたのですが、半年で2回症状が再発。再発する度、仕事を休まなくてはならず、仕事上支障があるため、手術を受けることとなった例です。
(B):多発性ヘルニア
この方の場合、手術が困難なことと共に、予後不良が予測される為、保存療法(鍼治療など手術以外の治療法)と、神経ブロック療法を併用。約半年間の治療で、症状が消失。
3、治療
椎間板ヘルニアの治療原則は、保存療法(外科手術以外の治療法)が第一です。保存療法によって、約90%以上の患者さんに、症状の改善が得られます。初期治療の約3〜4週間で、最終的な治療効果の予測ができます。半年間の治療により、8割以上に、ヘルニアの縮小、消失がみられ、痛みなどの症状がなくなります。
椎間板ヘルニアが、手術適応になるのは、以下の場合です。
@膀胱直腸障害(尿、大便の失禁)を伴う。
A神経の麻痺や下肢の筋力が著しく低下した。
B保存療法を継続できない(仕事関係で長期間通院できない等)。
4、結論と予後
椎間板ヘルニアは、20世紀後半の一時期に、約9割以上の患者が手術を受けていました。しかし、手術後の治療効果を冷静に検討したところ、手術を受けたにもかかわらず、症状の改善しない例が多いことが分かりました。結果、手術療法の適応例は、かなり減少することとなり、今では1割以下です。
現在、ヘルニアの治療は、まず最初に必ず保存療法を試み、改善があまりみられない場合、外科手術を選択の一つとする段階に至っています。
注) ここでの保存療法とは、外科的手術以外の治療です。
腰椎椎間板ヘルニアの治療には、安静、牽引、硬膜外ブロック、鍼灸治療などが有効です。
症状の強い椎間板ヘルニアに対しては、保存療法を行っても簡単には改善しません。簡単ではありませんが、徐々に改善してゆきます。治療に際し、ご自身にも協力をお願いします。治療は二人三脚。
@治療期:痛み等の症状が強い時期は、治療が中心です。当院では鍼治療で、多くの方の症状を改善してきました。この時期に、痛みなどの自覚症状がなくなっても、まだ、体は不完全治癒です。
A治療+運動期:症状の軽減してきたところで、治療と共に、ストレッチや体操など、簡単な運動法を行なっていただきます。
ここが重要です。症状の改善のためなので、是非協力をお願いします。
B維持期:症状がなく、再発の不安がなくなれば、体調管理です。治療時にも、運動法をお伝えするので、毎日少しでも体を動かして下さい。継続は力なりです。もちろん、水泳、ヨガ、ストレッチなど好きな運動を楽しんで下さい。寒い時期や疲労などで、時々不快感を感じたら、早めに治療をすれば、悪化しません。
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